ボーエ・モーエンセン ストーリー: デザイナーのこだわりが見える家
「庶民のデザイナー」として知られるボーエ・モーエンセン。それは彼の社交的な性格と、デモクラティック・デザインを信条としたことに由来します。モーエンセンはより多くの人々が購入でき、庶民の日常に沿った家具を発表してきたのです。使い込めば、使い込むほどに魅力を増す、モーエンセンのデザイン。これは自宅を見れば明らかです。彼が使い込んできた家具が、空間に魅力を放ち、住まいを別の次元にまで引き上げています。
モーエンセンは、自邸を何度か設計し、建ててきました。
新しい家具を生み出すための実験でもあったのかもしれません。それぞれの家にはモーエンセンの新しいビジョンが溢れています。その一つが北ユトランドのリムフィヨルド海峡の近くに建つ家。シンプルなラインと明確なフォルムを主体とした、モダニストとしてのモーエンセンの一面が大きくフィーチャーされた家です。現在この家にはモーエンセンの家族が暮らしています。
完璧なまでの細部へのこだわり
水辺に建つこの家は、モーエンセンが子供時代を過ごしたオールボーの近郊に位置しています。建築家アルネ・カールセン(Arne Karlsen)と協働で設計されました。大胆で印象的なライン。細部にはグラフィック的な要素が伺えます。
質の良さ、素材、美しいプロポーションによる調和を生み出す家。建築そのものが一つのアートともいえる家です。
また、この家に使用されているレンガはすべて、モーエンセンと彼のアシスタントたちの手作り。こうすることで細部にまで一寸の違いもない精密な家を追求したのです。すべての要素が精密に繰り返されることで構成された建築。ここではすべての要素が家に完璧に合致するよう熟慮されています。
アシスタントとしてこのプロジェクトの一部に関わった息子ペーター氏によると、レンガのサイズや積み方を検討するのに何週間も費やしたとのこと。建物に相応しいと同時に、内も外も全く同じようになる積み方が検討されたのです。
現在この家の所有者でもある、モーエンセンの息子ピーター氏曰く、「まず算出と図面に数週間かかりました。建物のすべての角をきちんと計測するためです。こうしたプロセスが重視されていることは、家に入るとすぐにわかります。すべてが統一されていると直観的に感じるはずです。サイズ、プロポーション、計算されたエレメントが何度も繰り返し使用され、この家に独特の統一感を与えているのです。」