今から65年以上前にハンスJ.ウェグナーが、当社カール・ハンセン＆サンに初めてデザインした椅子のコレクションは、その後当社の方向性を決定づけたばかりなく、いずれもクラフトマンシップに溢れるデザインでした。

名作はいかに作られるか？ある書籍を見ると「優れた芸術性と技巧、そして献身的なクラフトマンシップから成し遂げられる」とあります。わずか数週間の滞在で、ハンス J. ウェグナーがデニッシュモダンの歴史に残る、これだけの椅子を作り上げるとは、当時誰も思ってもいませんでした。 

CH22、CH23、CH24、そしてCH25はいずれもウェグナーらしい、彫刻的なフォルムをフィーチャーしたデザイン。ウェグナーの木材への造詣、そしてフォルムと機能への理解がデザインの基本となっています。中でもYチェアとして世界的に知られるCH24とペーパーコードが美しいラウンジチェアCH25は、カール・ハンセン＆サンで継続して製作されてきました。CH22とCH23は製作が一時途絶えていましたが、製作が再開、さらに同時期にデザインされながら発表されなかった椅子、CH26も併せて復刻されています。これでついに、ウェグナーが初めてカール・ハンセン＆サン社にデザインした、椅子のコレクションがすべて復活。ウェグナーの才能とビジョンを伝える椅子が市場に揃ったことになります。

「最初の椅子シリーズは、当時としてはかなり革新的。いずれも斬新であっと驚くデザインでした。またそのシンプルさに多くの人が目を見張りました。ウェグナーは見事なクラフトマンシップと誰にもわかりやすいデザインで多くの人に訴求する椅子を創り上げたと言えます。それぞれの椅子が独特の個性を放つ、ユニークな椅子のコレクション。いずれも高いクラフトマンシップを持って製作されています。その後のウェグナーデザインの基本となったコレクションと言えます。」と当社のCEO、クヌッド・エリック・ハンセン（Knud Erik Hansen）。 

まだ無名だったハンス J. ウェグナーとの協働関係を立ち上げたのは、クヌッド・エリック・ハンセンの父、ホルガー・ハンセン。この二人が現在、世界中でデザインアイコンと称され、コレクターアイテムとなっている数々の名作を世に送り出していったのです。そして再び協働関係のスタートを飾ったこれらの椅子がデンマーク、ゲルステッドの新工場で製作され、市場に復活することになりました。いずれの製品も優れた家具職人と張り職人が、最高級の質を目指して製作しています。

ウェグナーがカール・ハンセン＆サンに初めてデザインしたこの椅子コレクションには、素材への深い造詣、人間工学への鋭い感覚などウェグナーの稀有な才能を見ることができます。まずは5つの椅子の座に用いられたペーパーコード。特に独自の二重張りで施されるCH25ラウンジチェアには400mのペーパーコードが使用され、熟練した職人でも1脚仕上げるのに10時間を要します。そしてCH24に使用された曲木技術。Yチェアの大きな特徴ともなっている使用感に優れた弧を描くバックをレストを兼ねるアームに使用されています。発表と同時にモダンデザインの新しい流れを作った椅子と言えます。ちなみにペーパーコードは専門の職人が一つ一つ丁寧に施しており、優れた耐久性を誇るほか、必要に応じて張替も可能です。ウェグナーがカール・ハンセン＆サンに初めてデザインしたこの椅子コレクションは、生涯に渡り長い間ご愛顧いただける椅子であるばかりか、いずれも現在コレクターアイテムともなっているデザインです。

「最初にデザインされたこの4つの椅子はいずれも、デニッシュモダンの典型的な特徴を備えています。まず家具職人の伝統に基づく、古典的な家具の影響を受けていることです。これにより多くの人がタイムレスなデザインと評価しています。そして、自然素材を用いていること。サスティナビリティーに優れ、高い強度を誇っています。そして、オーガニックなフォルム。高い美的センスを感じさせますが、使用する人への配慮も忘れてはいません。身近に使用できる椅子となっています。」とデンマーク・デザインミュージアムの所蔵品管理の責任者である、クリスチャン・ホルムステッド・オーレセン（Christian Holmsted Olesen）氏。 

ウェグナーがカール・ハンセン＆サンに初めてデザインした椅子コレクションは、芸術作品と違い、目に美しいばかりでなく、優れた椅子としての機能を満たすことを基本としています。強烈な個性、伝統に裏付けされた洗練されたスタイル。これこそがウェグナーが椅子の巨匠と称される所以なのです。